先日、西宮北口で行われた、世界一小さいお店の使い方!アマゾン出店・販売セミナーに参加しました。
講師は実際にペット用品のECサイトを運営されていらっしゃる山口正信さんで、Amazonに出店するメリットやデメリットを詳しく教えていただきました。
私は仕事がSEOということもあり、お付き合いのあるECサイトのオーナーさんは独自ドメインで運営されている方や、独自ドメイン+楽天、ヤフーオークションという形でやられている方が多いです。
Amazonに出店できることは知っていましたが、具体的なメリット等がなんとなくしか理解出来ていなかったので、現場の生の声をお聞かせ頂いて、非常に勉強になりました。
このようなセミナーは大阪や神戸で行われる事はあっても、西宮で開催されることは珍しいので、素晴らしい取り組みだと思います。
質問コーナーでは参加者が次々と質問をされておりました。
それだけ参加者の皆さんが熱心だったということでしょうし、皆さんの心に刺さったセミナーであったことにほかなりません。
今回の記事では、世界一小さいお店の使い方!アマゾン出店・販売セミナーのレポートをお送りします。
世界一小さいお店の使い方!アマゾン出店・販売セミナー
アマゾン・マーケット・プレイスの概略
最初にアマゾンマーケットプレイスについて説明して頂きました。
マーケットプレイスとは
マーケットプレイスとは、Amazonのシステムを使って商品を売ることが出来る仕組みのことです。
Amazonの売上の約40%はマーケットプレイス経由の売り上げとなっているそうです。
アマゾンの特徴
- 商品ID ASIN(Amazon Standard Identification Number)単位で管理
- 全商品共通のUI(User Interface)
- A9エンジンによる強力なレコメンド(お薦め)機能
- 当日配送も可能な圧倒的な物流システム
基本的に1商品に1ページで商品管理が行われています。
全商品で共通のUIが使われていますので、ユーザーが迷うことなく操作することが可能です。
Amazonは物を売ることも凄い会社ですが、物流も凄いです。
すぐに商品が届くAmazonの物流システムを利用することができれば、大きなメリットとなります。
出店者から見た比較
楽天
- ページの編集が可能なので独自性が出せる
- イベントが出来る
- 顧客の囲い込み
- 商品のアップが大変
- 検索上位に来ないと買ってもらえない
- ロイヤリティ約6%
Amazon
- 商品ページがすでに存在していればすぐにアップ可能
- 単ページなので商品を見つけてもらいやすい
- 商品主体のデザインなのでお店の独自性が出しにくい
- 価格勝負になりやすい
- ロイヤリティ8%~15%
デメリットを上回るメリット
価格競争に陥りやすく、ロイヤリティが高いというのは、Amazonのデメリットとなります。
しかし、それらのデメリットを上回るメリットも存在しており、それが集客の規模とFBA(フルフィルメント・バイ・アマゾン)です。
Amazonの圧倒的な集客力を利用することにより、大手ショップ並の販売が可能になるそうです。
また、高いと思われるロイヤリティの中には広告代やアフィリエイト代も含まれていますので、物は考えようですね。
山口さんが、自社サイトや楽天で月間数個しか売れない商品をAmazonで売ることにしたところ、自社サイトと楽天を合わせて年間10個程度しか売れていなかったマニアックな商品が、Amazonでは月間で10個程度売れる商品となったそうです。
やったことはカートを取ることです。
「カートを取る」とは、一番目立つ位置に表示させるということです。
価格や評価で決まるとのことですが、基本的にやすいほどカートが取れると考えれば良いそうです。
価格の占めるウェイトが非常に高いので、価格競争が激しい商品には効果が薄いこととなります。
Amazonのイメージ
Amazonのイメージは、百貨店に1個だけ商品を置くイメージだと説明して頂きました。
カートが取れれば(上位表示出来れば)超一等地に商品を置いているのとおなじになります。
独自ドメイン:単独立地店舗。固定費は安いが集客に苦労する。
楽天:商店街。似たようなお店との競合もある。商店会費も必要。
Amazon:百貨店のテナント。お店は別だが、購入者はお店で買ったイメージではなく「◯◯百貨店で買った」印象が強い。
つまり、Amazonではお店の独自性を出すことは難しいのですが、それをデメリットと見るのではなく、お客さんが「Amazonで買った」という印象を持ちますので、Amazonの信用やブランドを借りていると考えるとわかりやすいでしょう。
FBA(フルフィルメント・バイ・アマゾン)とは
今回のセミナーで山口さんが特に素晴らしいポイントとして挙げられていたのが、FBA(フルフィルメント・バイ・アマゾン)です
FBAとは通常必要な作業のほとんどをアマゾンに丸投げすることが出来るシステムです。
出店者がやるべきことは、商品に管理用のバーコードを貼り付けAmazonの倉庫へ送ることと、価格などの管理くらいです。
FBAのメリット
独自ドメインのショップの場合、どうしても信頼感というものは低くなってしまうため、商品が売れるとしても代引きが多くなります。
Amazonのブランドを使うことにより、クレジット決済の割合が高くなるとのことです。確実に信用度は上がっていると考えていいでしょう。
また、FBAを使うと、アマゾンのサービスであるお急ぎ便のAmazonプライムも利用することができます。
通常のマーケットプレイスのみを利用されている方は、「通常3~4日以内に発送」と表示されてしまい、今すぐ欲しいお客様に購入してもらえる機会が減少してしまいます。
FBAはピッキングも梱包も発送もAmazonが行なってくれるため、迅速にお届けする事が可能となります。
また、Amazonの箱を使い、アマゾンがしっかりと梱包しますので、非常に満足度の高いものとなります。
FBAのコスト
通常のロイヤリティ(8%~15%)+在庫保管手数料+発送代行手数料 が必要となります。
在庫保管手数料は10cm*10cm*10cmで月7.9円なので、大型商品でもない限りはあまり意識する必要はないとのことです。
発送代行手数料は商品にもよるが250円~350円程度で、大型商品は500円だそうです。
発送代行手数料には送料や発送に関わるコストが全て入っており、
- 送料
- 梱包資材代(ダンボールや緩衝材)
- 人件費
- 事務所経費
が全て含まれることとなりますので、様々な費用が圧縮できることとなるでしょう。
配送作業を自社でやられている方はよくわかると思いますが、商品をピッキングして、梱包を行い、送り状を作成し貼り付け、運送屋に引き渡すという作業は、非常に大変な作業となります。
FBAマルチチャンネル・サービス
FBAマルチチャンネルサービスというものを利用すれば、自社で受注した商品の梱包、発送をAmazonに丸投げすることができるそうです。
自社で売り上げ、発送作業をお任せする形となりますので、当然、ロイヤリティは発生しません。
マルチチャンネル用の在庫保管手数料と発送代行手数料のみで利用することができます。
例えば、楽天で受注した分を、Amazonに発送してもらうことができます。
楽天で注文したのにAmazonの箱で届くと、お客様は「なんでかな」と疑問に思われるかもしれませんが、現在では、無地の箱やAmazonではない伝票も使うことが出来るようになっているそうですので、商品の発送業務を全てAmazonに任せてしまうというのも、一つの選択肢になりそうです。
山口さんの事例
山口さんが実際に成功した事例を解説して頂きました。
ペットのバリカン
山口さんが昔から取り扱っておられた、定価2980円、実売2000円前後の電池式のバリカンがあったそうです。
楽天では送料込み2500円で販売していて、月間20個くらい売れる商品だったそうですが、単価も安いのであまり力をいれていなかったそうです。
Amazonに出品してカートをとったところ、月間90個も売れて、バリカンの取引先にも驚かれたそうです。
Amazonプライムに対応させたところ、購入者の30%は速達希望だったそうで、山口さんいわく、緊急性の高い商品だと速達希望が50%を超えることもあるそうです。
緊急性の高い商品の場合、FBAが活きてくることは間違いないでしょう。
山口さんは独自ドメインのショップや楽天でも商品を販売されているので、それらの売り上げとは別に、Amazonでの売り上げが増えていることとなります。
電灯を自動点灯させるコンセント
山口さんがかっこいいスポットライトを購入されたのですが、いちいちスイッチを付けなければいけないので、人が近づくと自動でON/OFFされるコンセントを購入しようと探したそうです。
しかし、痒いところに手が届く丁度いい商品が見当たらず困っていたところ、アメリカのアマゾンではちょうどいい物が15$で売られていました。
ひょっとして、同じ悩みを抱えている人がいるのではないかと考え、自分が使う分も含め10個仕入れてテスト的にマーケットプレイスに4000円で出品したところ完売したそうです。
現在では月間30個ほど売れる商品になったとのことです。
ハワイ旅行
山口さんがハワイに旅行に行った時に、ショッピングセンターを歩いている多くの日本人がBath&BodyWorksという紙袋をぶら下げているところを発見。
その場で検索してみたところ、日本未上陸でアメリカで大人気であることがわかったので、3種類のシャンプーを10本づつ購入したそうです。
FBAで売ってみたところ、1個あたり5~600円の儲けになり、実質的に旅行代金が安くついたようなものとなったそうです。
しかし、この事例は、旅行にいったついでというだけですので、アメリカから輸入して送料等を払うと考えた場合、やっていけない点には注意が必要です。
FBAの海外展開
時間の関係で簡単な説明でしたが、海外のAmazonでFBAを行う方法を説明して頂きました。
海外のお客様に商品を販売する際の壁となるのが
- 日本のサイトに来てもらわなければならない
- 送料が高くなる
- お届けに時間が掛かる
- 言語の壁
といったものです。
もしアメリカでFBAを行えば、送料やお届け時間といった問題点を払拭することが可能になります。
やる場合には、アメリカの銀行口座が必要となるそうです。
アメリカの銀行口座にはパーソナルとビジネス口座があり、ビジネスを行う際にはビジネス口座が必要となるそうです。
ビジネス口座を解説するには、納税者番号をとって、申請する必要があるようで、なかなか、敷居は高そうですが、海外で需要があるような強みを持った商品があるのなら、検討してみてもよさそうですね。
出店方法
必要なもの
- メールアドレス
- 銀行口座:売り上げが入金される
- クレジットカード:売り上げがゼロだと、ここから引かれる。本人確認の意味合いが強い
- 事務所とする住所:自宅の住所で可
- 電話番号:携帯電話可
契約は1ヶ月更新となっているそうです。
アマゾンのメリットとして、2週間毎に締められ、その3日後には支払われるそうです。
クレジットカードで売れた場合なども、実際の決済を待たなくても、Amazonが売れたものだとみなして支払ってくれますので、資金化サイクルが早いことが特徴です。
大口出品と小口出品
出店方法には大口出品と小口出品の2種類があります。
大口出品は月額4900円が掛かりますが、小口出品には掛かりません。
しかし、小口出品の場合、1品売れることに成約料が+100円加算されますので、ある程度の数が売れる事が予想されている場合、大口出品を選択しておく方がよさそうです。
また、大口出品と小口出品では、利用できるサービスが違ってきますので、ご自身にあったプランを選択されるといいでしょう。
http://services.amazon.co.jp/services/sell-on-amazon/fee.html
FBAの納品方法
管理画面で商品を登録してから、業者IDと商品IDが紐付けられたバーコードを印刷して商品に貼り付け、指定されたAmazonの倉庫に納品するだけでいいそうです。
商品がAmazonの倉庫に届けば、管理画面で登録した商品がAmazonのサイト上に反映されるようになります。
まとめ
Amazonの販売は効率的です。
店単位ではないので扱う商品の自由度が高いので、売れそうな商品があれば、ジャンルを気にせずどんどん追加していくことができます。
しかし、価格競争に巻き込まれやすく、カートがとれなければ全く売れないこととなりますので、競争が少ない分野を見つけて勝負しましょう。
FBAで少しでも利益がでるのなら検討する余地があるとおっしゃっていました。
1000円の商品でもしFBAで100円の利益が残るのなら、月に100個売れば1万の利益になりますし、やった作業といえばシールを張ってAmazonに納品しただけです。
そんな商品が沢山あれば、夢が広がってきます。
まだネットショップをやったことがない方にもお薦めで、Amazonで売る経験を積めば、他のネットショップを運営していくことも可能となってきます。
とはいえ、Amazonだけに頼るのは危険ですので、あくまでリスク分散のための1つとしてAmazonを用いるのがいいとのことでした。
TAKEWARIというツールを使えば、海外のAmazonで売られている商品の価格を比較することができます。
思わぬ儲かる商材が海外のAmazonで眠っているかもしれません。
TAKEWARIのChromeエクステンションもありますので、本格的に参入される方は導入してみるといいでしょう。
また、面白い事例としては、自社の商品のサンプルを配る際にFBAを利用するというのものがありました。
発送費などは掛かりますが、宣伝費として考えると、面白い使い方もできるかもしれません。
今回参加した、山口正信さんの世界一小さいお店の使い方!アマゾン出店・販売セミナーは、私が今までそんなに興味を持っていなかったAmazonのFBAについて興味を持つきっかけを与えて頂きました。
「こういう仕組みもある」ということを頭の片隅にいれておいて、何か面白いことに繋げられるようになればいいなと感じました。
素敵なセミナーをありがとうございました。
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